普段私たちが使っているパソコンやテレビの設計寿命は一般的に5年から10年と言われています。ところが、これら家庭用機器とは比べ物にならないほど過酷な環境下で24時間稼働している衛星は、近年では15年以上の運用が可能となっています。衛星が打ち上げられた後は、たとえ機器の故障が起きたとしても修理を行うことはできません。なぜ衛星は過酷な環境下で15年間も動作することができるのでしょうか。
衛星に搭載される機器には「宇宙用認定部品」と呼ばれる宇宙環境でも故障しにくい信頼性の高い部品を使用します。各メーカが宇宙用認定部品を用いて衛星搭載機器を製造し、認定試験や受入試験に合格した製品のみで衛星を組み立てます。そして、出来上がった衛星に対し、打ち上げや宇宙環境を模擬した試験を行うことで、設計寿命を全うできる衛星であるかを検証します。
衛星試験は大きく分けて熱真空試験、振動試験、音響試験の3つに分類されます。
熱真空試験では、チャンバと呼ばれる窯状の試験装置内に衛星を入れます。このチャンバ内を真空状態にしてチャンバ内温度を急激に変化させる試験や、高温や低温の環境に長時間衛星をさらす試験を行うことで、熱設計の妥当性や搭載機器の性能を評価します。
振動試験は打ち上げ時の振動を模擬した試験で、振動台に衛星を載せ、縦方向と横方向にそれぞれ振動させて、ロケットからの振動に耐えうる性能であるかを評価します。
最後に音響試験とは、ロケット噴射によって起きる大音響による振動を模擬した試験です。先ほど説明した振動試験は正弦波振動試験(規則的で周期性のある振動試験)と呼ばれるのに対し、音響試験はランダム振動試験(不規則的で周期性のない振動試験)と呼ばれます。複数の巨大なスピーカーから発せられる轟音によって生じる音圧が衛星に不均一な振動を与えることで、ロケットからの振動に耐えうる性能であるかを評価します。
これらの厳しい試験に合格し、15年間以上の設計寿命を全うできる性能であることが実証された衛星のみが宇宙空間に向けて打ち上げられます。